長野市議会議員会派

改革ながの市民ネット

農林業が持つ公益的機能の共有化と活用

 昨日、私の個人質問について、本ブログで、その内容についてご報告させていただきました。その中で、長野市が誇る多くの農地をCO2吸収源となる公益的な資源と位置付けられないか、と、市の見解を伺ったところですが、9月10日付けの全国農業新聞に掲載された元農水省農村振興局長、現在、全国山村振興連盟事務局長の実重重美氏による掲載記事に感銘を受けましたので、概略を私なりに要約し、3つに分けて紹介します。 1.公益的機能を維持している農林業者  湿潤多雨の我が国において、農地は個々の独立した断片ではなく、一つのつながりの自然として土地も水も国土空間に広がっている。その広大な空間を管理しているのが、農林業者だ。農地は生産手段としての私的生活と同時に、国土・環境を保全し、災害を防止するなどの公益的な性格を持っている。 2.淵源と時代による変化  平安時代から継続されてきた荘園制度は、戦国時代に解体され、惣(村)ができ、地域農民が団結し生活する村落共同体が形成され、明治以降、耕地整理法・水利組合法ができ、戦後、土地改良法として統合されてきた。  ここまでの長い間においても、共同で利用する水路や道路は日常的な管理を自前で行い、災害等の比較的大きな改修などは領主に助成の申請し、甲斐武田の信玄堤、徳川幕府による利根川東遷事業にみられるように、非常に大規模なものは領主や幕府が直轄で行ってきた。今日の大規模な事業は国営で、次に大きな事業は都道府県、比較的小規模な事業は地方自治体を含めた団体で行う、という秩序が踏襲されてきた。更に、近年では、多面的機能支払い等の制度が導入され、公益的性格への助成が拡充されてきた。 3.公益的な位置づけの強化  EUでは、農業者を「環境の管理者」としての位置づけを強めており、管理活動に対し直接支払いが行われている。世界的に脱炭素が喫緊の課題である今、日本でも農業者を「公益員」と位置づけ、直接支払いを強化しても良い時期にきているのではないか。  以上です。農林業の多面的効果は、昨日も紹介した気候変動対策のみならず、治山治水対策として、農地が果たす公益性と社会的意義を再認識する必要がある、と考えます。日本学術会議の2005年の計算によると、水田を中心とする農業の多面的機能に関わる経済評価は、洪水防止(3兆4,988億円)、河川流況安定(1兆4,633億円)、土砂崩壊防止(4,782億円)、土壌侵食防止(3,318億円)等、全体で8兆2,226億円としています。  水田が大雨の時、遊水池やダムのような役割を果たす洪水防止機能、水を地中に浸透させる地下水涵養機能等、長野市農業においても、全市民に提供している多様で有益な機能ではないでしょうか。農業が持つ多面的機能をカーボンニュートラルと治山治水対策として明確に位置付け、市民全体で理解を深め、共有し、最大限活用し、具体的な対策を加速させ、市民の安全安心につなげていくことを期待したいと思います。

農林業が持つ公益的機能の共有化と活用

 昨日、私の個人質問について、本ブログで、その内容についてご報告させていただきました。その中で、長野市が誇る多くの農地をCO2吸収源となる公益的な資源と位置付けられないか、と、市の見解を伺ったところですが、9月10日付けの全国農業新聞に掲載された元農水省農村振興局長、現在、全国山村振興連盟事務局長の実重重美氏による掲載記事に感銘を受けましたので、概略を私なりに要約し、3つに分けて紹介します。 1.公益的機能を維持している農林業者  湿潤多雨の我が国において、農地は個々の独立した断片ではなく、一つのつながりの自然として土地も水も国土空間に広がっている。その広大な空間を管理しているのが、農林業者だ。農地は生産手段としての私的生活と同時に、国土・環境を保全し、災害を防止するなどの公益的な性格を持っている。 2.淵源と時代による変化  平安時代から継続されてきた荘園制度は、戦国時代に解体され、惣(村)ができ、地域農民が団結し生活する村落共同体が形成され、明治以降、耕地整理法・水利組合法ができ、戦後、土地改良法として統合されてきた。  ここまでの長い間においても、共同で利用する水路や道路は日常的な管理を自前で行い、災害等の比較的大きな改修などは領主に助成の申請し、甲斐武田の信玄堤、徳川幕府による利根川東遷事業にみられるように、非常に大規模なものは領主や幕府が直轄で行ってきた。今日の大規模な事業は国営で、次に大きな事業は都道府県、比較的小規模な事業は地方自治体を含めた団体で行う、という秩序が踏襲されてきた。更に、近年では、多面的機能支払い等の制度が導入され、公益的性格への助成が拡充されてきた。 3.公益的な位置づけの強化  EUでは、農業者を「環境の管理者」としての位置づけを強めており、管理活動に対し直接支払いが行われている。世界的に脱炭素が喫緊の課題である今、日本でも農業者を「公益員」と位置づけ、直接支払いを強化しても良い時期にきているのではないか。  以上です。農林業の多面的効果は、昨日も紹介した気候変動対策のみならず、治山治水対策として、農地が果たす公益性と社会的意義を再認識する必要がある、と考えます。日本学術会議の2005年の計算によると、水田を中心とする農業の多面的機能に関わる経済評価は、洪水防止(3兆4,988億円)、河川流況安定(1兆4,633億円)、土砂崩壊防止(4,782億円)、土壌侵食防止(3,318億円)等、全体で8兆2,226億円としています。  水田が大雨の時、遊水池やダムのような役割を果たす洪水防止機能、水を地中に浸透させる地下水涵養機能等、長野市農業においても、全市民に提供している多様で有益な機能ではないでしょうか。農業が持つ多面的機能をカーボンニュートラルと治山治水対策として明確に位置付け、市民全体で理解を深め、共有し、最大限活用し、具体的な対策への取り組みを進めていく長野市の取り組みに期待したいと思います。

個人質問で登壇!

 9月21日、加筆修正しました(色付き部分)  長野市議会9月定例会個人質問が、本日(9/10)までの3日間、本会議場にて、各議員と市長はじめ理事者側との間で論戦が繰り広げられました。  私は、昨日(9/9)登壇しました。未だ、独特の雰囲気と緊張感から、冷静さを失うこと、答弁をその場で、完全に整理するに至らないことも多々ありますが、まずは、質問内容について、ご報告させていただきます。  今回の主なテーマは気候変動としました。先月公表されたIPCCの第6次評価報告書は、2013年第5次評価報告書の「気候システムに対する人間の影響は明瞭である」から、「人間の影響が大気、海洋および陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」との表現に変えました。つまり、「人間活動が気候システムの温暖化をもたらした」と結論付けた、と言えます。  また、環境省による、「世界の平均気温が産業革命前より2度上昇したと仮定した場合、2019年の台風第19号と同規模の台風が上陸すれば、千曲川・信濃川など8水系の流域で、最大流量は平均15%増え、氾濫の危険性のある支流の中小河川の箇所数は1.44倍となる」との試算や、2018年グローバル気候リスク指標の「台風や熱波などの災害から最も影響を受けた国は日本である」との指摘等を考えると、2つの大河と多くの土砂災害警戒区域を擁する長野市こそが、気候危機の渦中にあるとの認識に立ち、ハード対策としての治山治水と、その根本的原因としての温室効果ガス大幅削減に、全力で取り組まなければならない、との観点から、 (1)長野市自らの気候非常事態宣言の発出を求めました。気候危機の時代に直面するのは、紛れもなく私たちの将来世代であり、私たちも含め、将来世代が生き続けられる世界をつくり出さなければなりませんが、この問題が有する長い時間軸とCO2費用の外部化といった特徴から、日常生活の中で、市民1人1人が当事者として、意識するのは難しい、と考えます。そのため、長野市自ら、気候非常事態宣言という強いメッセージを発信することで、脱炭素社会の実現に向け、積極的に乗り出していく、という強い意思表示が求められるのではないか。 環境部長:、現在、環境審議会に諮問している第3次長野市環境基本計画の素案を11月にはお示しできる予定で、それに併せて実施時期も含めて、実施について検討させていただきたい。 (2)また、長野市が、脱炭素社会に向かうためには、①地産地消、②循環、③再生可能エネルギーへの移行、の3点が重要な柱となると考えるとともに、今後、長野市全ての部局は、これまでの公共政策執行基準に加え、温室効果ガス排出量と吸収量及び削減量を新たな評価基準に位置づけることが必要ではないか。全ての部局における温室効果ガス排出量と吸収量の収支を積算し、差し引き排出量の「見える化」により、カーボンニュートラル実現のための思い切った政策が明確になる、と考えます。これらを進めるためには、相当な覚悟を持って臨まなければならないのではないでしょうか。 環境部長:政策、施策ごとの温室効果ガスの算定については、このような状況を注視しつつ、算定方法の研究など、国や県の動向を探り、情報共有や連携を図りながら研究を深めていきたい。  本市の特徴である豊富な森林資源などのバイオマスや燃料の調達、確保などが必要とされる分、地域の経済効果がより大きいと考えており、現在、国から優先的な支援が期待できるバイオマス産業都市への認定を目指し、農林水産省に申請をしている。   このバイオマス産業都市への認定を一つのステップとして、さらなる省エネルギー構造の推進や再生可能エネルギーの拡大、活用などにつながる新たな施策を研究するなど知恵を絞り、今の温暖化のツケを次の世代に負担させないように、2050ゼロカーボンに挑んでいきたい。 (3)脱炭素による持続可能な社会への速やかな移行を進めるためには、経済、社会、技術、制度、ライフスタイルを含む社会システム全体の転換が必要です。  宇沢弘文先生は、1960年代、アメリカから帰国され、モータリゼーションの急激な進行を目の当たりにし、公害問題や自然破壊の広がりに危機感をおぼえ、1974年に「自動車の社会的費用」を著されましたが、今や、自動車に代表される交通手段のあり方は、脱炭素社会に向けて、乗り越えなければならない大きな課題となっている、と考えます。  長野市地球温暖化対策地域推進計画における2012年度部門別温室効果ガス排出量をみると、事業所・ホテル・病院・店舗などの業務部門が31.7%と最も多く、次いで、運輸部門24.2%となっていますが、 運輸部門が温室効果ガス排出量の約四分の一を占める原因の一つは、長野市の積年の課題である丹波島橋、長野大橋を中心とした交通渋滞が考えられます。  交通渋滞は、自動車の旅行速度低下により、燃費が悪化し、CO2排出量が増加し、また、長野市をはじめ多くの地方都市では、住宅、大規模商業施設等が郊外に立地され、市民の生活には自動車が欠かせなくなっています。自動車による移動は快適であり、多くの市民の当然の欲求ですが、それにより引き起こされる環境負荷増大を放置してはならない、と考えます。  これまでの交通施策は、利便性の向上や渋滞解消を主な目的として掲げられてきましたが、今後は、運輸部門の構成要素別に詳細なCO2排出量を示すことにより、例えば、①自動車利用者に対する公共交通機関と自家用車等のCO2排出量の差額を何らかの形で負担してもらうことの検討や、②環境負荷削減に効果的なLRTやBRTの導入、また、③旅行速度の改善に向けた道路や橋の整備、及び、④規定水準を超えるCO2濃度に達した場合、CO2排出量の多い車両から通行規制の対象とするなどの、いわゆる、低排出ゾーンの創設等、これまでにない、新たな発想による積極的な対策に踏み込むべきではないか。 都市整備部長:これまで本市は、自家用車が環境に与える影響を考慮し、環境負荷の少ない公共交通の構築といった観点から、通勤手段の改善や公共交通機関の利用促進など環境に配慮した行動を位置づけている。   具体的には、通勤時に公共交通機関を利用するながのスマート通勤応援事業や自転車の積極的な活用など、自家用車に頼らない行動につながる施策を展開している。 公共交通の利用促進は、住民の移動手段を安定的に確保し、快適性を向上させるなど自立した生活を支えるとともに、暮らしの質を充実させることが目的であり、さらに地域経済の発展への貢献や環境負荷の低減にもつながるものと考えている。   温暖化対策は継続的に多岐にわたる対策により取り組んでいくことが肝要であることから、御提案の新たな発想による積極的な対策についても、国の動向も注視しながら、環境部とともに、調査研究していく。 (4)近年、農業は潜在的にCO2吸収源となり得る、として注目を集めており、2008年3月に公表された、農林水産省の地球温暖化防止に貢献する農地土壌の役割についての報告書は、「仮に、全国の農地土壌に堆肥や稲わらなどの有機物を使用した場合、化学肥料のみを使用した場合に比べ、年間で貯留できる炭素量が約220万トン増加する。水田土壌からのメタン発生量が炭素換算で増加する点はマイナスになるが、それを差し引いても炭素貯留量は増加する」と、まとめています。  これまで日本における農業は、農業用機械の燃料消費などの直接的な要因の他に、農薬や肥料の製造に関わる温室効果ガスの発生等により、CO2排出産業の一つとして位置付けられ、長野市地球温暖化対策地域推進計画の2012年度部門別温室効果ガス排出量においても2.3%と部門別では最も低いものの、排出部門と位置付けられていましたが、農業部門を考える場合に大事なことは、農業全体のデータではなく、品目別の排出量と吸収量を明確にすることではないか。  また、2017年(H29)12月の農水省のシンポジウム資料によれば、農林水産部門から排出されるCO2の絶対量は少ないものの、日本全体のCH4(メタン)排出量の約76%、N2O(亜酸化窒素)の排出量約45%を農業分野が占めている、ことを、私なりに考えると、主に水田と畜産が影響しているのではないか、と推察します。  他方、果樹や野菜は、光合成によって大量の二酸化炭素を吸収しており、また、2020年9月の農研機構の資料は「土壌は炭素のプールであり、これを大きくすることで、農地をCO2吸収源とすることが可能」と示唆していることから、本市農業は単なるCO2排出部門ではないのではないか、と考えます。  長野市が誇る果樹園地や小麦、大豆、野菜を栽培する多くの農地をCO2吸収源となる公益的な資源と位置付けられないか、また、これらの吸収源から生産された長野市の農産品が広く消費されるような、これまでにない新たな観点からの、長野市農業振興策を講じていくべきではないか。 農林部長:、本市はこれまでもウッドチッパー導入に支援し、粉砕した剪定枝を雑草抑制のため農地の被覆材として圃場へ還元を促すなど、農地をCO2吸収源としてきた。   また、化学農薬の使用低減に向け、性フェロモン剤やプラスチックの使用抑制になる生分解性農業用マルチの導入に支援しているほか、農業研修センターでは地道な取組だが、野菜残渣の堆肥化と農場での利用を啓発するとともに、令和2年度からは有機JAS認証の取得に対する支援を開始するなど、環境に優しい農業に取り組んでいる。 これらに加え、本市は引き続き多様な担い手の確保と集約集積によります農地の有効利用を通じ、耕作放棄地の発生抑制及び地産地消の取組を進めることで、足元におけるCO2の吸収及び排出の抑制につなげていきたい。 (5)CO2吸収に繋がる具体的な取り組みとして、山梨県が始めた、果樹園の土壌に炭素を貯留して二酸化炭素濃度を低減する「4パーミル・イニシアチブ」を紹介します。  4パーミル・イニシアチブとは、世界の土壌中の炭素量を年間0.4%(4パーミル)増加させれば、人間の経済活動によって増加する大気中の二酸化炭素を実質ゼロにできるという考え方に基づく国際的な取組みで、2015年のCOP21でフランス政府が提唱し、我が国では、山梨県が2020年4月に都道府県で初めて参加を表明しました。 また、本年5月、CO2削減に取り組む圃場で生産された農産物を認証する「やまなし4パーミル・イニシアチブ農産物等認証制度」を創設し、新たなブランドとして位置付ける取り組みが始まっていますが、太陽と大地の恵みを受けた本市農業の特長を活かし、長野市版「4パーミル・イニシアチブ」、「4パーミル・イニシアチブ農産物等認証制度」に取り組むべきではないか。 農林部長:フォーパーミルイニシアチブの考え方は、始まったばかりということもあり、農業者はもとより消費者にもなかなか浸透しているとは言い難い状況で、まずは、私たちが生きていくため欠かせない食料供給を担う重要な産業である農業がCO2の吸収に貢献し、地球に優しい側面を有する産業であるという認識を市民に共有していただけるよう啓発していくことが重要と考えている。   本市としては、国や山梨県等の動向を踏まえつつ、引き続き環境に優しい農業の取組を支援していくとともに、フォーパーミルイニシアチブ、またその認証制度につきましては、その先に向けた課題として受け止めたい。 (6)次に、取り上げた事項は、私が継続して取り組んでいる災害に強いまちづくり、に関してですが、気候変動に大きく影響を受けているのが自然災害の脅威です。やはり、今、出来ることを確実に進め、安全性を高めて行かなければなりません。  これまでも取り上げてきた雨水貯留浸透機能の強化について、流域治水を進める上で、雨水の河川への流出抑制は重要な対策であり、事業者や市民等、全体での取り組みにより、確実な効果として位置付けなければならないのではないか。そのために、現状を正確に把握し、事業所等に協力を求めてくことは重要な治水対策だとの視点から質問しました。  本年3月定例会代表質問で、治水対策としての大型商業施設等への雨水貯留や浸透施設の進め方について伺った際、「昭和61年に定めた市建築物防災指導要綱に基づき、建物を建築する際、雨水浸透ますの設置や駐車場を浸透性のある舗装にするよう建築確認申請などに併せて指導を行っている」との答弁がありました。  また、長野市が、昭和62年に策定した「総合治水計画」は、現在、盛んに言われている流域治水対策を先取りした、目的・基本方針・具体的施策を掲げ、個人住宅、アパート、工場、倉庫、店舗及び民間駐車場に対し、新築、改築を問わず、雨水貯留及び浸透施設設置を今日まで要請してきていることを踏まえ、昭和61年の市建築物防災指導要綱と昭和62年の総合治水計画策定に基づいた雨水貯留浸透施設整備の実効性について、 ①両施策の指導と要請によって、雨水の河川への流出抑制に効果がみられているのか、現状の実績について、数値(全体とそれぞれの整備完了率)で示して欲しい。 ②特に、大型商業施設等で、雨水を出来るだけ河道に流出させないことは、流出抑制として、有効な対策であることから、本市が、民間の大型駐車場等を雨水貯留浸透施設として位置づけ、雨水の貯留及び浸透の能力を上げていく取り組みが必要ではないか。 建設部長:①流出抑制への効果に関する現状の実績ついて、長野市建築物防災指導要綱においては、行政指導の指針を定めたものであり、浸透ますの設置数などの具体的な数値目標及び評価指標等は示されていない。  また、長野市総合治水計画においては、当時数値目標を設定しなかった理由は不明だが、現状の長野市下水道10年ビジョンの中で、各戸への雨水貯留施設助成事業の計画値が示されていることにとどまっている。   しかしながら、それぞれの基本方針に基づき建築物を建築する際の雨水浸透ますの設置など、災害を未然に防止する雨水処理対策や公共施設を利用した雨水貯留施設等は着実にその数を増やしており、流出抑制に効果を上げている、考えている。  ②現在、民間施設等を活用した雨水貯留に関しては、長野市建築防災指導要綱により、建物を建築する際、雨水浸透ますの設置や駐車場を浸透性のある舗装とする指導や都市計画法に基づく0.1ヘクタール以上の開発行為の許可における設置基準により対応している。  民間の大型駐車場の雨水貯留浸透施設としての位置づけることについては、設置を促すための新たな制度の立案や財源等も必要と考えており、今後、国の施策の動向を注視する中で対応について研究していく。 (7)先月、前線の停滞により、市内を流れる犀川及び千曲川の水位が上昇し、市内の排水機場及び樋門・樋管では地元の管理者等による排水が行われました。私の地元である千曲川左岸、真島町堀之内地区にある樋門では、閉門後、農業用水路の水位が上昇し、民家等への被害は無かったものの、一部の田畑への浸水、道路の冠水等が生じました。  大雨の際、同地区では、毎回のように発生する内水対策としての早期の雨水渠整備完了は、地元住民の切実な願いであることから、現在の進捗状況と、完了時期について確認しました。 建設部長:、実施延長790メートルを計画し、平成28年度に地元に対して事業内容の説明を行い、同意を得た後詳細設計に着手し、平成30年度から雨水渠整備に必要な用地買収に着手、令和元年度までに買収を完了している。令和2年度には延長73メートルの区間を先行して整備した。  地元との協議により、施工可能な期間が非かんがい期に限られることから1年間の施工延長も短く、通常より完成までの期間が長くなってしまうため、真島町堀之内地区の東方樋管までの間については、令和9年度の完了を目標として整備を進めている。 (8)そして、最後に、新型コロナウイルス感染症対策の宿泊療養施設について、厚労省「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養のための宿泊施設確保・運営業務マニュアル(第5版)」は、感染症法第44条の3、第2項の規定に基づき、都道府県が宿泊療養実施を決定した場合、市町村と協力し、周辺住民や近隣企業に対し、丁寧に説明し、理解を求める、としていることから、長野市としてマニュアルの則った説明等が行われてきているのか、対応の状況について伺う。 保険所長:いずれの施設も所在地や施設名を公表していないことから、周辺住民への対応等についてコメントする立場にはないが、県に確認をしたところ、当該施設所在場所の市町村長の了承の下、必要に応じて市町村の担当職員も同行しながら、施設近隣の住民等に説明を丁寧に行い、御理解を得た上で運用を開始しているとのこと。   また、県によると、北信ブロックに開設されている2か所の宿泊療養施設については、運用開始後、周辺住民や近隣企業等の方からの問合せや苦情等は受けていないとのことだ。  以上が質問と答弁の内容です。  来週からは、議論の場を委員会室に移し、常任委員会、決算特別委員会が開かれます。緊張感を持って、しっかり臨んで参ります。

個人質問で登壇!

 長野市議会9月定例会個人質問が、本日(9/10)までの3日間、本会議場にて、各議員と市長はじめ理事者側との間で論戦が繰り広げられました。  私は、昨日(9/9)登壇しました。未だ、独特の雰囲気と緊張感から、冷静さを失うこと、答弁をその場で、完全に整理するに至らないことも多々ありますが、まずは、質問内容について、ご報告させていただきます。  今回の主なテーマは気候変動としました。先月公表されたIPCCの第6次評価報告書は、2013年第5次評価報告書の「気候システムに対する人間の影響は明瞭である」から、「人間の影響が大気、海洋および陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」との表現に変えました。つまり、「人間活動が気候システムの温暖化をもたらした」と結論付けた、と言えます。  また、環境省による、「世界の平均気温が産業革命前より2度上昇したと仮定した場合、2019年の台風第19号と同規模の台風が上陸すれば、千曲川・信濃川など8水系の流域で、最大流量は平均15%増え、氾濫の危険性のある支流の中小河川の箇所数は1.44倍となる」との試算や、2018年グローバル気候リスク指標の「台風や熱波などの災害から最も影響を受けた国は日本である」との指摘等を考えると、2つの大河と多くの土砂災害警戒区域を擁する長野市こそが、気候危機の渦中にあるとの認識に立ち、ハード対策としての治山治水と、その根本的原因としての温室効果ガス大幅削減に、全力で取り組まなければならない、との観点から、 (1)長野市自らの気候非常事態宣言の発出を求めました。気候危機の時代に直面するのは、紛れもなく私たちの将来世代であり、私たちも含め、将来世代が生き続けられる世界をつくり出さなければなりませんが、この問題が有する長い時間軸とCO2費用の外部化といった特徴から、日常生活の中で、市民1人1人が当事者として、意識するのは難しい、と考えます。そのため、長野市自ら、気候非常事態宣言という強いメッセージを発信することで、脱炭素社会の実現に向け、積極的に乗り出していく、という強い意思表示が求められるのではないか。 (2)また、長野市が、脱炭素社会に向かうためには、①地産地消、②循環、③再生可能エネルギーへの移行、の3点が重要な柱となると考えるとともに、今後、長野市全ての部局は、これまでの公共政策執行基準に加え、温室効果ガス排出量と吸収量及び削減量を新たな評価基準に位置づけることが必要ではないか。全ての部局における温室効果ガス排出量と吸収量の収支を積算し、差し引き排出量の「見える化」により、カーボンニュートラル実現のための思い切った政策が明確になる、と考えます。これらを進めるためには、相当な覚悟を持って臨まなければならないのではないでしょうか。 (3)脱炭素による持続可能な社会への速やかな移行を進めるためには、経済、社会、技術、制度、ライフスタイルを含む社会システム全体の転換が必要です。  宇沢弘文先生は、1960年代、アメリカから帰国され、モータリゼーションの急激な進行を目の当たりにし、公害問題や自然破壊の広がりに危機感をおぼえ、1974年に「自動車の社会的費用」を著されましたが、今や、自動車に代表される交通手段のあり方は、脱炭素社会に向けて、乗り越えなければならない大きな課題となっている、と考えます。  長野市地球温暖化対策地域推進計画における2012年度部門別温室効果ガス排出量をみると、事業所・ホテル・病院・店舗などの業務部門が31.7%と最も多く、次いで、運輸部門24.2%となっていますが、 運輸部門が温室効果ガス排出量の約四分の一を占める原因の一つは、長野市の積年の課題である丹波島橋、長野大橋を中心とした交通渋滞が考えられます。  交通渋滞は、自動車の旅行速度低下により、燃費が悪化し、CO2排出量が増加し、また、長野市をはじめ多くの地方都市では、住宅、大規模商業施設等が郊外に立地され、市民の生活には自動車が欠かせなくなっています。自動車による移動は快適であり、多くの市民の当然の欲求ですが、それにより引き起こされる環境負荷増大を放置してはならない、と考えます。  これまでの交通施策は、利便性の向上や渋滞解消を主な目的として掲げられてきましたが、今後は、運輸部門の構成要素別に詳細なCO2排出量を示すことにより、例えば、①自動車利用者に対する公共交通機関と自家用車等のCO2排出量の差額を何らかの形で負担してもらうことの検討や、②環境負荷削減に効果的なLRTやBRTの導入、また、③旅行速度の改善に向けた道路や橋の整備、及び、④規定水準を超えるCO2濃度に達した場合、CO2排出量の多い車両から通行規制の対象とするなどの、いわゆる、低排出ゾーンの創設等、これまでにない、新たな発想による積極的な対策に踏み込むべきではないか。 (4)近年、農業は潜在的にCO2吸収源となり得る、として注目を集めており、2008年3月に公表された、農林水産省の地球温暖化防止に貢献する農地土壌の役割についての報告書は、「仮に、全国の農地土壌に堆肥や稲わらなどの有機物を使用した場合、化学肥料のみを使用した場合に比べ、年間で貯留できる炭素量が約220万トン増加する。水田土壌からのメタン発生量が炭素換算で増加する点はマイナスになるが、それを差し引いても炭素貯留量は増加する」と、まとめています。  これまで日本における農業は、農業用機械の燃料消費などの直接的な要因の他に、農薬や肥料の製造に関わる温室効果ガスの発生等により、CO2排出産業の一つとして位置付けられ、長野市地球温暖化対策地域推進計画の2012年度部門別温室効果ガス排出量においても2.3%と部門別では最も低いものの、排出部門と位置付けられていましたが、農業部門を考える場合に大事なことは、農業全体のデータではなく、品目別の排出量と吸収量を明確にすることではないか。  また、2017年(H29)12月の農水省のシンポジウム資料によれば、農林水産部門から排出されるCO2の絶対量は少ないものの、日本全体のCH4(メタン)排出量の約76%、N2O(亜酸化窒素)の排出量約45%を農業分野が占めている、ことを、私なりに考えると、主に水田と畜産が影響しているのではないか、と推察します。  他方、果樹や野菜は、光合成によって大量の二酸化炭素を吸収しており、また、2020年9月の農研機構の資料は「土壌は炭素のプールであり、これを大きくすることで、農地をCO2吸収源とすることが可能」と示唆していることから、本市農業は単なるCO2排出部門ではないのではないか、と考えます。  長野市が誇る果樹園地や小麦、大豆、野菜を栽培する多くの農地をCO2吸収源となる公益的な資源と位置付けられないか、また、これらの吸収源から生産された長野市の農産品が広く消費されるような、これまでにない新たな観点からの、長野市農業振興策を講じていくべきではないか。 (5)CO2吸収に繋がる具体的な取り組みとして、山梨県が始めた、果樹園の土壌に炭素を貯留して二酸化炭素濃度を低減する「4パーミル・イニシアチブ」を紹介します。  4パーミル・イニシアチブとは、世界の土壌中の炭素量を年間0.4%(4パーミル)増加させれば、人間の経済活動によって増加する大気中の二酸化炭素を実質ゼロにできるという考え方に基づく国際的な取組みで、2015年のCOP21でフランス政府が提唱し、我が国では、山梨県が2020年4月に都道府県で初めて参加を表明しました。 また、本年5月、CO2削減に取り組む圃場で生産された農産物を認証する「やまなし4パーミル・イニシアチブ農産物等認証制度」を創設し、新たなブランドとして位置付ける取り組みが始まっていますが、太陽と大地の恵みを受けた本市農業の特長を活かし、長野市版「4パーミル・イニシアチブ」、「4パーミル・イニシアチブ農産物等認証制度」に取り組むべきではないか。 (6)次に、取り上げた事項は、私が継続して取り組んでいる災害に強いまちづくり、に関してですが、気候変動に大きく影響を受けているのが自然災害の脅威です。やはり、今、出来ることを確実に進め、安全性を高めて行かなければなりません。  これまでも取り上げてきた雨水貯留浸透機能の強化について、流域治水を進める上で、雨水の河川への流出抑制は重要な対策であり、事業者や市民等、全体での取り組みにより、確実な効果として位置付けなければならないのではないか。そのために、現状を正確に把握し、事業所等に協力を求めてくことは重要な治水対策だとの視点から質問しました。  本年3月定例会代表質問で、治水対策としての大型商業施設等への雨水貯留や浸透施設の進め方について伺った際、「昭和61年に定めた市建築物防災指導要綱に基づき、建物を建築する際、雨水浸透ますの設置や駐車場を浸透性のある舗装にするよう建築確認申請などに併せて指導を行っている」との答弁がありました。  また、長野市が、昭和62年に策定した「総合治水計画」は、現在、盛んに言われている流域治水対策を先取りした、目的・基本方針・具体的施策を掲げ、個人住宅、アパート、工場、倉庫、店舗及び民間駐車場に対し、新築、改築を問わず、雨水貯留及び浸透施設設置を今日まで要請してきていることを踏まえ、昭和61年の市建築物防災指導要綱と昭和62年の総合治水計画策定に基づいた雨水貯留浸透施設整備の実効性について、 ①両施策の指導と要請によって、雨水の河川への流出抑制に効果がみられているのか、現状の実績について、数値(全体とそれぞれの整備完了率)で示して欲しい。 ②特に、大型商業施設等で、雨水を出来るだけ河道に流出させないことは、流出抑制として、有効な対策であることから、本市が、民間の大型駐車場等を雨水貯留浸透施設として位置づけ、雨水の貯留及び浸透の能力を上げていく取り組みが必要ではないか。 (7)先月、前線の停滞により、市内を流れる犀川及び千曲川の水位が上昇し、市内の排水機場及び樋門・樋管では地元の管理者等による排水が行われました。私の地元である千曲川左岸、真島町堀之内地区にある樋門では、閉門後、農業用水路の水位が上昇し、民家等への被害は無かったものの、一部の田畑への浸水、道路の冠水等が生じました。  大雨の際、同地区では、毎回のように発生する内水対策としての早期の雨水渠整備完了は、地元住民の切実な願いであることから、現在の進捗状況と、完了時期について確認しました。 (8)そして、最後に、新型コロナウイルス感染症対策の宿泊療養施設について、厚労省「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養のための宿泊施設確保・運営業務マニュアル(第5版)」は、感染症法第44条の3、第2項の規定に基づき、都道府県が宿泊療養実施を決定した場合、市町村と協力し、周辺住民や近隣企業に対し、丁寧に説明し、理解を求める、としていることから、長野市としてマニュアルの則った説明等が行われてきているのか、対応の状況について、伺いました。  以上が質問内容です。それぞれの答弁については、来週、議事録で確認できると思いますので加筆します。まずは、質問内容のみでご容赦ください。  来週からは、議論の場を委員会室に移し、常任委員会、決算特別委員会が開かれます。緊張感を持って、しっかり臨んで参ります。