長野市議会議員会派

改革ながの市民ネット

令和2年7月の大雨

 この度の災害に際し、被害に遭われた皆様に対しまして、心よりご冥福とお見舞いを申し上げます。  九州地方での大雨に続き、去る、7月8日、長野県にも大雨特別警報が出された。犀川は長野市から上流の安曇野市明科の陸郷地点、長野市信州新町の弘崎地点、そして小市で水位が上昇、更に、千曲川では杭瀬下、立ヶ花それぞれの地点においても水位が上昇していった。私の地元中の地元は犀川を背にしており、早朝から地元消防団の方々が警戒の任に就かれていた。  この日、私は早朝6時から流域を巡回。川の流れの速さに絶句した。犀川の流速(陸郷と小市地点)について調べてみると、洪水時は平常時の4倍から8倍と非常に早くなる、と千曲川河川事務所発行の「千曲川・犀川の河道特性」に書かれている。  時間の経過とともに、水位の上昇の脅威に直面した。私の自宅近くにあり、私も定期的に利用している「犀川南マレットゴルフ場」の半分が川と化していたのだ。更に下流を巡視してみると、犀川と千曲川の合流地点である落合橋付近は高水敷まで水が上がっていた。  地球温暖化、気候変動を踏まえた抜本的な治水対策を早急に確立させ、必要な事業を進めていかなければならない、と改めて感じている。 その上で、ここ数日の新聞報道から気になった事項を取り上げる。 <ダム事前放流、木曽川水量減(7月9日、信濃毎日新聞より)>  梅雨前線の影響による今月上旬の大雨で、県や関西電力などが管理する県内13のダムは、降雨のピーク前に放流し、水位をあらかじめ下げる事前放流を行った。  5月29日、長野県、関係市町村、電力会社が大雨に備えた治水協定を結んだ。これにより、県内千曲川水系の26ダム、木曽川水系は9ダム、天竜川水系2ダムで事前放流などの洪水調節が可能となった。  協定締結後、初となった今回の事前放流は、木曽川水系の8カ所のダムで約4200万トンの容量を確保し、氾濫の危険があった木曽川の水量を2割ほど減らす効果があった、とされている。今回、木曽川水系の他に、千曲川水系4ダム、天竜川水系1ダムで実施された、とのこと。 ➡ダムの事前放流は、信濃川水系緊急治水対策プロジェクトに盛り込まれている「既存施設を活用した洪水被害軽減対策」の一つだ。今般の検証は、今後行われると思うが、結果を待ちたい。  国交省関東地方整備局は、昨年の台風第19号時、利根川上流の7つのダム群は1億4,500万トンを貯留し7ダムが無ければ利根川水位が約1m上昇した、とダムの効果を評価している。 この評価については、専門家の間で幾つかの見解があるようだが、長野県内にあるダムを治水対策として活用することは、事前放流による危険性を排除する方策をきめ細かく定めた上で治水効果を高めていくことが必要だ、と考える。 <堤防の被覆型工法は最も優れた工法(7月8日、信濃毎日新聞より>  国交省北陸地方整備局は7月7日、千曲川堤防調査委員会に台風19号災害による長沼穂保の千曲川堤防決壊について、復旧方法や決壊原因をまとめた報告書案を提示し、了承を得た。  決壊箇所を含む前後140m区間で住宅側と川側(表裏法面)をコンクリートブロックで覆う工法を明記した上で、越水などでブロックが壊れないよう法面の勾配を緩やかにすることなど、工事をする際に留意点が盛り込まれた。  同委員会の大塚悟委員長(長岡技術科学大学大学院教授)は「絶対に大丈夫とは言えないが、現在考えられるものでは最も優れた補強だ」とした。報告書案は7月末までに同整備局がホームページ上で公表する、としている。 ➡私も報告書が出来次第、確認したいが、今回損壊した堤防(破堤には至っていない)については、被覆型工法ではなく、危機管理型ハード対策(法面全体を覆う工法でない)が採用されている。大塚委員長が認めているように、現在考えられる最も優れた補強であるのならば、堤防復旧では原則、すべての箇所で被覆型を採用すべきだと、考える。更に、国が示している重要水防箇所で裏法面補強が必要とされている箇所への採用も検討すべきだ。 <長野市長、国に要望(7月8日、信濃毎日新聞より>  7月10日、長野市長は千曲川改修期成同盟会として、国土交通省北陸地方整備局に対し、災害防止のための遊水池などの洪水調節施設の整備、河道掘削による河川整備の進捗を強く要望する。 ➡市議会の3月及び6月定例会で取り上げた内容であることから、要望内容等について確認したいと考える。私は、特に遊水池に洪水調節機能としての大きな期待を寄せている一人である。ダムの事前放流と遊水池はセットで、総合治水対策を進める上で重要な事業である。しかし、利根川水系の3つの遊水池を調査してみると、遊水池設置は、その道のりは平たんでなく、予算や用地の確保等の難題が待ち受けている。いかに進めていくのか、議会で議論を深めていく。 <台風第19号対応、長野市が報告書公表(7月9日、信濃毎日新聞より>  長野市は、台風第19号災害をめぐる市の対応について課題や対応策をまとめた「検証報告書」を公表した。 その中で、災害廃棄物処理について、仮置き場の開設を想定し、普段から候補地を調整する、とまとめている。 ➡報告書公表に関し、7月7日に議会への報告があり、その後、危機管理防災課と議論。  仮置き場の調整は大事なことである。肝心なことは、発災直後の仮置き場、その周辺の交通渋滞等で復旧作業の第一段階である家財等の搬出で混乱を招かないことだ。私は昨年、発災直後から、連日、各被災現場で家財の搬出、運搬作業を行ったが、天候により仮置き場に車両が入れない、仮置き場まで距離があり時間がかかる、車の渋滞等の課題を感じた。そうしたことから各地で仮置き場が住民主体で設置され、復旧作業を前進させた、と受け止めている。いかにスムーズに荷物を運び出せるかが、その後の復旧作業を大きく左右させると思う。その上で、被災状況や被災地のインフラ含めた環境等を考えると、現場から上がってくるニーズを的確かつ迅速に捉え、柔軟に対応できる体制を整えることがより重要な視点ではないか、と主張させていただいた。  今回の大雨で被害を受けた熊本県の様子を見ると、仮置き場は大混雑、数時間待ちだけでなく、時間内に荷物を降ろすことができず、そのまま帰路に就く、といった報道もある。想定するのは大事であるが、こうした状況を作らないことを大きな課題として捉えることが大事なのではないか、と考える。

九州熊本、球磨川の氾濫

 九州屈指の1級河川である球磨川氾濫の報道が飛び込んできました。球磨川は、その源を熊本県球磨郡銚子笠に発し、人吉・球磨盆地を貫流し、山間の狭窄部を流下し、八代平野に出て八代海に注ぐ、流路延長115km、流域面積1,880km2の河川です。  速報(時事通信)によると、7人死亡、14人心肺停止、重体1人、行方不明者が4人との報道であり、心よりご冥福とお見舞いを申し上げます。  7月5日付け信濃毎日新聞は、球磨川は上流から下流にわたり氾濫し、広範囲で冠水。人吉市内では約20m区間で堤防が決壊した、また、狭い川幅と水があふれやすい地形であった、と報じています。  国土交通省河川局は、平成19年5月に「球磨川水系河川整備基本方針」を策定していますが、私がインターネットで河川整備を進めていく上で策定する「河川整備計画」を探したところ、見つけることができませんでした。(探し方が甘かった可能性もあり、策定され公表されているかもしれません。河川法第16条の2は、河川整備基本方針に沿って計画的に河川の整備を実施すべき区間について、当該河川の整備に関する計画を定めておかなければならない、としていることから策定されているはず、ただ、熊本県河川課HP上から策定された記録が示されていない)  取り急ぎ、球磨川水系河川整備基本方針(以下、基本方針)を確認してみました。 <河川の概要>  上流部は、人吉・球磨盆地の田園地帯を蛇行しながら流下し、人吉市街部を貫流する。  中流部は、山間狭窄部で急流となっており、川岸は巨岩や奇岩が連なり瀬と淵が連続して交互に出現している。  下流部は、八代市街部を貫流する。  以上を見ると、報道であるように、上流から中流部に所在する山間狭窄部が治水対策上の課題だった、と解します。 <これでの治水事業>  本格的な治水事業は、昭和12年に下流の八代地区(荻原地点)の計画高水流量を毎秒5,000tと定め、更に、昭和22年、上流の人吉地区(人吉地点)の計画高水流量、毎秒4,000tとし河道拡幅、築堤、掘削などの改修が行われたのが最初であった。  その後、昭和29年8月及び9月の出水を契機とし、昭和31年に計画を見直し、(今般、緊急放流について報道にあった)市房ダムで毎秒500tの調節を行うことで、基本高水流量を荻原地点、毎秒5,000tに人吉地点で毎秒4,000tとした。(市原ダムは昭和35年完成)  更に、昭和40年7月、当時の計画高水流量を上回る洪水に見舞われたことから、計画高水流量を荻原地点で毎秒7、000t、人吉地点では昭和22年と同じ毎秒4、000tとする工事実施基本計画を昭和41年4月に策定した。  この計画に基づき、上流の人吉では中心市街地の対岸において引堤※を実施。中流から一気に流下し、大きく湾曲した八代市街部で大規模な引堤、築堤、掘削、護岸整備等が実施された。(※川の流下能力を大きくするため、川の幅を拡大し既設の堤防を堤内地側に移動させること)  しかし、昭和57年7月、人吉地点で計画高水流量を大きく上回る洪水が発生、家屋損壊47戸、床上浸水1、133戸に及ぶ甚大な被害が生じ、更に、平成5年、7年、16年、17年の洪水時、人吉地点では計画高水流量と同程度の流量が発生し、中流部を中心に浸水被害が発生した。  ここまで、平成19年策定の基本方針から氾濫と治水工事についての概略です。その上で、私が確認したいことは、洪水調節機能を設けた上で計画高水流量が定められた、と受け止めますが、人吉地点での計画高水流量は、昭和22年は毎秒4、000t、昭和31年に毎秒4、000t、昭和40が年毎秒4、000tと、計画高水流量の改定がなされていないことです。  基本方針で定めた洪水調節機能の整備がどこまで行われていたのか、どこまで実効性が高まっていたのか、重要な確認事項だと思います。 <基本方針で定めた災害発生防止又は軽減について>  平成19年5月策定の基本方針は、河道や沿川の状況等を踏まえ、地域の特性にあった治水対策を講じ、具体的には堤防の新設、拡堤、河道掘削、護岸整備を実施する、としております。また、計画規模を上回る洪水及び整備途上段階での施設能力以上の洪水が発生し氾濫した場合においても、被害をできるだけ軽減させるために河道や沿川の状態、氾濫形態等を踏まえ必要な対策を実施する、とあります。  先にも記したように、球磨川の整備の基本となるべき事項において、洪水調節施設により流量を調節することで河道への配分流量を少なくする、とされていることから、過去の水害を考慮しながら計画高水流量の見直しや適宜対策工事を行ってきたとすれば、基本方針また整備計画に基づく基準そのものの妥当性(例えば、人吉地点の計画高水流量が据え置かれてきた点、計画高水流量の改定がなければ、計画高水位の見直しも無い可能性が高い)が疑われても仕方がない、と感じます。  そもそも、人吉地点では、何もしなければピーク時に毎秒7、000tの流量があり、基本方針で定めた毎秒4、000tを安全に流下させるために洪水調節施設で毎秒3、000tの調節が必要です。素人の机上の計算ですが、毎秒3,000tなので、仮に、1時間分を貯留させようとすれば180万トン規模の調節が必要となるのではないでしょうか。  今から10年以上前に策定された方針に基づき、どこまで実現されたのか、ここまでどんな進捗管理、検証、議論がなされてきたのか、その内容によっては行政や政治の責は大きいと感じます。 <各水害を教訓とし、流域市町村の役割が求められる時代>  私は、これまで市議会において1級河川である千曲川及び犀川に関する河川整備について、再三取り上げてきました。1級河川は国管理河川であることから、整備や管理の面で長野市は、直接的な事業展開は原則できません。(河川法第9条により都道府県知事、指定都市の長が行うことができる管理もある)  しかしながら、特に昨年に台風第19号により大きな被害を受けた長野市はもちろんのこと、1級河川を擁する地方自治体は、国だとか県だとか言っていられないはずです。流域住民である長野市民の生命と財産を守るために、積極的かつ主体的に関与し、市民の安全と安心につなげるための働きをしなければならないと考えます。  そうしたことから、私は引き続き、国管理河川でありますが、議会で取り上げ続けていくことが私の役割だと考えます。  球磨川の氾濫に関して、これから様々な専門家による検証がなされると思います。私もそれらの報告について自分なりに検証し、国の果たしてきた役割、県及び流域市町村におけるこれまでの取り組み、更に昨今の気候変動等を踏まえ、今、必要な河川整備とは何のか、捉えていけるように努力します。