今週、1月23日(木)及び24日(金)の2日間、長野市議会水道事業広域化調査研究特別委員会で岩手県中部水道企業団及び八戸圏域水道企業団への行政視察を行いました。私も昨年に引き続き、同特別委員会に所属していることから参加してまいりましたので、その報告をいたします。
◇1月23日(木) 岩手中部水道企業団「水道事業広域化について」(北上市)
<経緯>
同企業団を構成する北上市、花巻市、紫波町は、それまで事業体毎に給水事業を行っていたが、平成3年4月から岩手中部広域水道企業団からの受水(水道供給)となった。
その後、同地域において給水人口及び量の減少、膨大な更新投資の発生、更新事業費の確保、更に、水道料金の見通し等の課題により、平成14年2月に各市町に給水事業を行っていた岩手県中部広域水道企業団議会において、同企業団及び2市1町を含めた広域化への提言がなされた。
平成16年から本格的な水道広域化に関する協議が重ねられ、平成26年4月「岩手中部水道企業団」による事業が開始された。
<現在>
広域化に伴い水道施設の再編(ダウンサイジング)が進められ、平成23年に広域化事業計画策定時から令和5年3月までの間で、取水施設36から29、浄水施設34から23、配水施設86から74、ポンプ施設65から63となった。また、施設及び管路更新に要する事業費では、それまでの年間約18億円から平成25年以降は40億円から50億円確保することが可能となるなど補助金を活用しながら安全で安心な水道水の安定的な供給となっている。それにより管路の適正管理が図られ有収率80%後半の数値で維持している。
同企業団は、危機管理センターを建設し、令和4年12月より使用している。建設の目的は、自然災害や水道施設事故等による被害を最小限に抑え、早期復旧を行うためのもので、加えて、平時においては、水道施設の維持管理、更新業務、水質検査センターとしての役割を担っている。
クラウド監視システムにより、それまでの各浄水場での管理、異なるシステムによる煩雑さ等といった課題を解消するに至っている。
<今後>
水道事業統合により職員の独自採用が進み、人材確保の面での貢献がある。他方、人材育成や職員のモチベーション確保・向上、技術継承・向上については課題もあり、OJTを進めてくとのことだった。
経営基盤の面では、改善が図られたものの経常利益は下降傾向にあり、更に、企業債残高が類似団体の平均より多くなっている等、更なる経営基盤の強化が必要とのことだ。
水道料金は、統合から5年目となる平成30年に統一した。物価等の高騰により、給水原価が供給単価とほぼ同額となる等、健全な財政運営、経営の効率化、適正な水道料金に関して現状の課題と捉え、改善に向けた方策を練っている。
利用者とのコミュニケーションやサービスの充実により、更なる利用者サービスの向上を図っていく。
<所感>
統合の効果として施設のダウンサイジング、施設や管路の更新、整備に要する事業費の確保が安定的に図られていることだと認識した。また、管路の適正な維持管理により、有収率の向上に繋がり、安定的な給水事業となっていることは大きな効果といえるだろう。
他方、既存水道施設能力における有収水量、配水水量の能力過剰分が生ずるといったギャップの拡大についての捉え方について大変興味深く受け止めた。この現象の考察を深めたい。
経営基盤に関しての課題は、将来に向け、水道料金に大きく影響を及ぼすこととなると思う。安全安心な水の供給維持は当然のことであるが、中長期的視点に立ち、水道事業に関し市民への説明を丁寧に繰り返し、現在取り組まれている利用者へのサービスの向上、充実と合わせ、コミュニケーションを図っていくことが求められるのではないかと受け止めた。
◇1月24日(金) 八戸圏域水道企業団「水道事業広域化について」(八戸市)
<経緯>
同企業団は昭和61年4月に事業を開始し、40年目を迎えようとしている。設立の経緯として、昭和40年代半ば、八戸市を含む周辺地域では、水需要が伸びる中、既存水源が限界にあったことから、安定水源を求め、建設省へ6万5千㎥の追加水利権を申し入れた。しかし、4万㎥が暫定水利権とされ、不安定な状態の解消に至らなかったことが背景にあった。
説明の中で、仮に、その当時、十分な水利権を得ていれば、世増ダムへの依存や水道事業広域化とはならなかったかもしれない、との弁があった。
設立後の広域化事業として、第一期拡張事業が進められ、世増ダムへの参加による水源整備、浄水・送水・排水の各施設整備、施設の統廃合等が行われてきた。水源、浄水場、排水池は各々、24から4、21から4、43から38となり、安定水源の確保に加え、効率及びコスト面において効果を得ることができた。総事業費は668億円でそのうち国庫補助金は218億円で全体の33%。
<現在>
現在、令和元年から令和10年までの10年間を計画期間とした「第4次水道事業総合計画」に基づき、各施策が進められている。毎年、PDCAサイクルによる事業評価を行い、3から5年毎に計画の見直しや修正を図り、計画の実行性を高めている。
当初の総計画数112に対し、見直し後は95となり、そのうち完了15、継続90、新規5、中止が5。中止された事業について質問してみると、「水質監視」、「洪水対策」は現状で対応可能であることから不要との判断をしたとのことだった。
また、ライフサイクルコストの削減について、機械電気設備に関し、定期整備や整備工事により機能が保持され、劣化及び消耗が少ないことから、更新・整備周期を延長し、事後保全対応機器については、予備機の状況、影響の度合い、修繕の容易さ、費用等の面から故障するまで使用し続ける等で対応している。
<今後>
青森県南、岩手県北の各水道事業体は、施設の老朽化、技術の継承及び職員不足、給水収益の減少等、水道を取り巻く環境はますます厳しさが増していることから、北奥羽地区水道事業協議会を平成20年1月に設立した。将来の広域連携を検討し、施設、水質データ管理、施設管理、システム、それぞれの共同化について検討を進めてきたが実現に至ったものは少ない。
しかし、広域化に向けた勉強会等を繰り返し行っており、経営関係、施設関係に関し、現状と課題について整理している。
<所感>
同企業団の歴史は古く、高度成長期における水需要と安定水源の確保といった経緯がある。現在、長野市が検討している広域化協議の背景等とは事情が異なっているが、同企業団設立により、その後の水道事業の安定に繋がり、今日までの安全安心な水の供給が継続できていることは、大きな効果であり貢献だと受け止めた。
しかし、青森県南及び岩手県北における更なる広域化に向けての取り組みには、住民を含めた各水道事業体の状況(水道料金等)から、水道を取り巻く環境が厳しい中にあっても実現に向けて幾つもの高いハードルがある現実を認識することができた。
以上となりますが、現在、長野市、千曲市、坂城町、上田市による水道事業広域化に関する協議が進められております。それぞれの事業体でその受け止め方、考え方の相違はありますが、重要なインフラである水道事業を持続可能なものとしていかなければなりません。安全安心な水を将来にわたって供給していくためには何がベストなのか、更なる調査研究を進めてまいります。
令和7年、新しい年の幕が開きました。昨年は何かとお世話になりましたこと、心より感謝申し上げます。今年は巳年、へびは、古くからさまざまな意味を持つ生き物として捉えられ、金運や繁栄をもたらす縁起物として広く認識されています。また、「新しく産まれてくる」、「将来・未来がある」といった意味もあるとのことで、これは、へびが定期的に脱皮を繰り返すことに由来し、生命力や再生、変化と進化の象徴とされ、「巳」という漢字は、胎児の形から派生したと言われ、「子孫繁栄」や「家族平和」といった意味をもつといわれているとのことです。
さて、昨年12月、長野市議会12月定例会が19日間の会期で行われました。12月定例会で私が所属する会派では、条例の改正案「長野市国民宿舎松代荘の設置及び管理に関する条例等の一部を改正する条例」について、会派内で相当な議論を行った結果、本会議の採決では「反対」をいたしました。会派を代表し原議員が「市が示している標準額や上限額の根拠が不明で」との趣旨で反対討論に立ちました。(結果的には賛成多数で可決)ここ数年、市が進めようとしている事業等について、初動やその後の対応に関し、様々な指摘がなされている現状を踏まえると、市には各案件に関し、分かりやすい、十分な説明を引き続き、求めていきたいと思います。
一方で、私たち議員、議会も同様に、市民への説明責任があります。議案や市の施策への賛否はともかく、市の政策決定に関わっている以上、各々の活動を通し、お伝えしなければならない立場に居る、ということです。
元・大和大学政治経済学部教授 田中富雄氏は「議会・議員活動がしっかりしていないと、市民から「議会・議員は聞くだけ」、「聞くだけの議会・議員」と思われてしまう。そう思われないためには、議会・議員は「市民にキチンと応答する」ことが求められる。キチンと応答するには、結論と結論に至る(場合によっては結論に至らない)経緯・理由・データ等をハッキリと示す必要がある」と述べています。
更に、「議会には、議会は市民のために存在するということを前提として活動することが求められ、議会は市民とのコミュニケーションをとることが大切」と指摘しています。
私が自分自身の行動指針としているのが「歩く 聴く 届ける」です。田中氏の指摘に対し、自信をもって、日々の活動が出来ている、と自己評価できるよう、令和7年もしっかり取り組んでまいります。
昨年の私の活動を振り返ると、大変充実した日々を過ごすことができたと感じております。他方、これまで以上に、特に、議会内において担わなければならない役割が日毎に増してきたことから、大きなプレッシャーを感じることも少なくありません。
しかし、こうした経験を通し、本年も、更に市政に貢献するとともに、更なる成長に繋がるよう邁進します。
寒さが尚、厳しさが増していく季節であります。体調管理に十分にご留意をいただきたく存じます。巳年の令和7年、何事にも全力で取り組んでまいります。引き続き、ご指導ご鞭撻、よろしくお願いいたします。