平成30年3月定例会が閉会しました
- 2018年03月22日
- 改革ながの市民ネットからのお知らせ, 活動報告
平成30年3月定例会が閉会し、平成30年度一般会計予算が成立しました。我が改革ながの市民ネットは、一部を除き概ね評価できる予算案であると考え賛成しましたが、その一部につき苦言を呈する形で、会派を代表し布目裕喜雄幹事長が「賛成討論」を行いました。
我が会派が、大きな問題と考える案件は、放課後子ども総合プランの有料化と、その補完策としての「一緒に遊ぶ機会の提供事業」です。全国で無償提供されている放課後子供教室を包含する本市独自の「長野市版放課後子どもプラン」を有償化するにあたり、プランを利用できなくなる児童への配慮を求めた福祉環境委員会委員長報告を理由に「一緒に遊ぶ機会の提供事業」を無償で行うモデル事業を本年度3校で実施しました。これは、プランを利用していない児童が指定された日に一度下校した後登校し、学校体育館でプラン利用児童と一緒に遊ぶ事業です。来年度は実施校を増やして行うための予算も盛り込まれていますが、そもそも、集団登校・集団下校を行っているのは、登下校の危険から児童を守るためであり、この事業に参加するために集団下校後、児童が一人で再登校した時の危険性を危惧せざるを得ません。本来であれば、「子育て先進都市ながの」を目指す本市においては、プラン事業は無償で行うべきであり、有償であっても利用料を理由に登録できない家庭がでないように運営すべきです。来年度から月2000円の登録料が必要となるにあたって、所得や兄弟関係による減免措置も設けており、低所得を理由に登録できない児童が出る可能性は少ないはずですが、にもかかわらず危険であり効果に疑問符がつく事業を継続しようとするのは、将来的な値上げを見据えてのことかと深読みせざるを得ません。
既に、有償化の条例が制定されてしまった現状においては、その廃止とセットでなく予算案に反対することは市長の予算提出権を侵害する可能性があるため、修正予算案の提出は見送りましたが、「賛成討論」を行った次第です。
以下、布目裕喜雄幹事長の討論文を掲載します。
議案第1号、H30年度長野市一般会計予算におおむね賛成する立場で討論します。
1,499億5千万円を計上する新年度予算は、「市民総元気予算」を掲げ、健康・予防の推進や福祉の充実、「ながのベジライフ宣言」と「カンバックtoながの」を合言葉に、子どもから高齢者まで、全ての市民が、元気で、ともに活き生きと暮らしていける“ながの”を実現する予算と位置付けられました。
再選を果たした加藤市長は、人口減少社会・超高齢社会が本格化する中で、特に力を入れたい施策として、「安定した雇用の確保」、「子育て支援・教育環境の整備」、「医療・介護の充実」、「市民の健康の保持・増進」、「社会的援助を必要とする方の自立支援」、「災害に備えた万全の体制の構築」、「公共交通の整備・渋滞対策」の7点を掲げ、新年度予算編成に臨んだものと推察します。
こうした問題意識には異論はなく、特に力を入れる重点施策として目に見える具体化を強く求めて来たところでもあります。
とりわけ、大学立地支援、親元就農者支援事業、バスロケーションシステムの導入、長野版ネウボラの拡大、長野ベジライフ宣言事業を芽だしとする健康増進・健康づくり事業の推進、救急ワークステーション事業の本格実施、空き家解体・利活用事業補助金の創設、さらに、公共施設マネジメントの推進をにらんだ公共施設等総合管理基金の創設などなどの新規事業の展開は率直に評価したいと考えます。
新年度予算編成にあたり改革ネットで提案した重点政策・施策等が十分に活かされているかといえば、「?」の部分もありますが、総論的には、新年度予算に盛り込まれた新規事業等の展開、及びその効果に大いに期待したいところです。
なお、財政規律の保持、健全財政の堅持においては、特段の配意を求めたいと思います。
しかし、他方で、新年度では、放課後子ども総合プランの有料化、介護保険料の引き上げ、さらには、財政運営の責任主体が県に移行する国民健康保険事業において、H30年度は保険料が据え置きされるものの、H31年度、H33年度にそれぞれ0.3%(一世帯当たり4,300円)引き上げを盛り込んだ「国民健康保険事業の第1期財政健全化計画」が策定されたところでもあります。
国保や介護の市民負担増は、国の制度設計によるもので、国の施策の転換、国庫負担の拡大による制度の見直しを求める立場に立ちますが、いかんせん地方自治体としてはやむを得ないところがあります。
しかしながら、医療・介護の充実を求める市民の声に、医療難民、介護難民を作り出さないとする市独自のセーフティネットの拡充で答えていくことも問われているといえます。
「市民総元気予算」が掛け声倒れにならないよう、絶えず検証しながら確実・適正な予算執行を求めたいと考えます。
そのうえで、一点、苦言を呈し、予算執行の凍結を含めた慎重な取り組みを求めたい事項があります。放課後子ども総合プランの有料化にあたり、減免制度の拡大が「利用しない・利用できない」とする保護者・児童の受け皿になるとしてきたこれまでの答弁が、4月有料化直前になってもなお充分な対応・勧奨ができず、見切り発車となりかねないことです。
私たちは、放課後子ども総合プランの有料化、利用者負担を導入する条例に反対してきました。
有料化は、親の経済状況により利用できなくなる児童の発生を容認し、放課後の安全で安心な居場所を奪ってしまうことにつながること、3年後に見直される利用料金において負担導入時は2,000円ですが、利用者負担額の上限である4,160円に計画的・段階的に引き上げていくことにつながり、ますます居場所を狭めていってしまうことを危惧するからです。
しかし、多数で有料化条例が可決し、条例に基づき利用料の歳入を見込む予算に対する修正は、市長の予算提出権を侵害しかねないことも考慮し、修正案対応は見送ったものの、無償でプランを継続・充実させることを求めたいとする立場に変わりはありませんが、それでも、減免制度の周知が行き渡る中で、利用できないとする保護者の動向、さらに利用者負担に見合ったプランの充実がいかに図られるのかを見極めたいとの思いで行政の取り組みの推移を注視してきました。
予算では、利用料1億7千万円をプランのための特定財源とし、子どもプラザに利用する教室へのエアコンの整備(31施設のうち15施設に設置、残り16施設はH31年度予定)、遊具や用具・教材費等の倍増(一人あたり1,500円が3,000円に)、支援員報酬の30円アップ(時給860円に)などのプランの充実が図られてはいます。
しかし、必要な支援員を充足できるだけの処遇改善、安全な放課後の居場所のための施設整備は十分であるとは言い難い状況にあります。
減免対象に想定される世帯への減免制度の周知・勧奨は、例えば準要保護児童の把握と対応をはじめ、個人情報保護を理由に「制度的に困難」とされ、事実上置き去りになってしまうことが非常に懸念されます。
また、「利用しない・利用できない」と答えた保護者をフォローすることを目的に実施したアンケート調査は結果集約が完了せず、保護者の意向が十分に把握できず、個別的な対応ができないままスタートすることにもなります。
申込者数は基準日とされる昨年5月1日の登録児童数8986人に対し、3月9日現在で8060人と1割近く減少しています。保護者アンケートで「有料化で利用しない・利用できない」と答えた保護者13.4%が反映されている情況であると考えます。
結果、減免制度の拡大によってもなお、利用できないとする保護者の十分な受け皿足りえていないのではないか、希望するすべての児童を受け入れるとするプランの方針は、有料化により、親の経済事情が許す世帯への放課後の居場所の確保に留まり、所期の目標の達成を難しくするのではないか、すなわち、「利用したくても利用できない」保護者・児童を置き去りにされ見切り発車となりはしないか、極めて憂慮する立場に立ちます。
更に問題となる点は、「一緒に遊ぶ機会の提供」事業の継続と拡大です。
放課後子ども総合プランの有料化に伴い、プランの未登録自動のいわば救済策として、登録児童と未登録児童が一緒に遊ぶ機会をつくるとしたもので、今年度3校区でモデル事業を実施しましたが、十分な検証がなされないまま、新年度予算では、実施期間の拡大と合わせ5校区でのモデル実施が盛り込まれました。
アンケートでは4人に1人が継続されれば参加する意向とのことですが、参加児童の分母が小さすぎるのではないでしょうか。
職員対応で実施され、職員の負担を増加させていることを考えると際立った効果を産みだせない事業であり、むしろ、児童センター・こどもプラザの運営に返って混乱を生むことになっているのではと考えます。
また、一旦下校方式をとるが故の児童の安全確保にも大きな課題を残すものとなっています。
モデル事業とはいえ、実施態勢の人的確保の見通しが乏しく、しかも将来的に全校区で実施できうる展望が全く見いだせない中、モデル事業として継続・拡大する意義は極めて薄い事業と言わなければなりません。
プランを有料化するがゆえに派生する矛盾を拡大させるだけの事業になりはしないか、十分な検証を行い、モデル事業段階でのサンセットも真剣に検討すべきであると考えます。
留守家庭の子ども達をはじめ希望するすべての子どもたちに安全な放課後の居場所を確保する施策展開となるよう、また、子育てと仕事の両立が求められ、子どもの貧困が社会問題となっている今日、他市に誇りうる子育て支援先進都市を体現できるよう、保護者・児童の声をしっかりと受け止め、必要な事業の見直しに臆病であってはならないと苦言を呈したいと思います。
今一度、立ち止まり、できれば有料化の執行を凍結し、放課後子ども総合プランが希望するすべての児童に放課後の安全で安心な居場所を確保する事業として他市に誇りうる事業として展開されることを切に願うものです。
以上、共同戦線的な会派である改革ネットの総意を束ねた形で、予算執行を厳しくチェックしていくとともに、市民が主役、幸せ実感できるまちづくりの推進を求め、新年度予算案に対する賛成討論とします。